鮨、料理に関するはなしのネタ
お客様の中には、美味しいものを食べるのと同じくらい、お友達とのお話を 楽しみにご来店される方が多いかと思います。おかめで仕入れた鮨と料理に 関するはなしのネタで、お友達との楽しいお時間をお過ごしください。
”江戸前すし”とはなに?
おかめは”江戸前すし”だと言うけれど、関西に行っても「江戸前すし」の看板があるでは
ないか。「”江戸前すし”とはいったい何を指すのか」とお考えのお客様もあると思います。
江戸時代の末、東京湾で取れた新鮮な魚介類に、当時は冷蔵庫がないので鮮度を保つために、 酢〆にしたり、醤油に漬けたり、煮る等の手を加えたネタを酢で合わせたご飯にのせて その場で握る、ファーストフードのすしが考案されました。 当時のすし屋は、東京湾で取れた生鮮なネタをアッピールするために、”江戸前すし”と呼んで いたようです。
このすしが、待たずに食べられることから、新し物好きで、せっかちな江戸っ子に好まれ、 大流行したようです。 流行るとコピー商品が出るのは世の常、日本中で江戸スタイルのすしということで、 ”江戸前すし””と看板を上げるすし屋が出てきたようです。
一般的には、江戸時代から明治の初めころまでにかけてのスタイルで、新鮮な魚介類を酢〆にしたり、 醤油に漬けたり、煮る等の手を加えた(仕事をした)ネタを酢飯にのせて握るすしのことを、 ”江戸前すし”と呼ぶようです。
江戸前すしのネタのはなし
今回のテーマは、「春子(かすご)」と呼ばれる春らしい魚を取り上げます。
「春子」とは、3月の終わりころから漁の網にかかる、10cm程度の小さな真鯛のことです。 からだの色が桜のようにピンク色なので「桜鯛」とも呼ばれ、春の訪れを感じさせてくれる魚です。 丁寧にウロコをとり、三枚におろして小骨を取って塩を振り、酢〆にしてすしネタとします。 関西では、「春子」を押し寿司にする様ですが、江戸前では半身をシャリに乗せ 握りすしとしてお出しします。皮にほんのりと桜色が残り、小さくても鯛の上品な白身の 味で、春を感じさせてくれる季節のすしネタです。
春先は、鯛が産卵のため浅瀬にあがって来るので、よく太って美味しい鯛の取れる季節でもあります。 初物好きの江戸っ子も、夜桜見物の帰りに屋台のすし屋で「春子」や鯛のヅケをつまんでいたのでしょう。 東京のような都会では、季節を感じるものが少なくなりました。すし屋に寄って、目と舌で春の訪れを感じると いうのはいかがでしょうか。